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  • 環境科学領域

動物の生態から、生物多様性保全を考える

野生動物の行動や生態を、進化的な観点から詳しく調べています。そして、明らかになった動物の生態や自然環境の現状に関する情報を元に、生き物の多様さを保全する具体的な方法を探る研究を推進。並行して、生物多様性保全の大切さを理解してもらうことを目的として、子どもを対象とした環境教育の授業の考案・実践も行っています。

髙橋 大輔教授

意外と知らない、身近な生き物のこと

私たちの暮らしは、自然の恵みによって成り立っています。自然の恵みは生物多様性によって支えられていますが、世界的に生物多様性が低下しており、大きな問題となっています。生物多様性を保全するためには、生き物の生態を知る必要があります。しかし、なじみのある生き物でも、どのように暮らしているのか、なぜそのような行動や生態が進化してきたのか、詳しく分かっていないものがたくさんあることに気づきました。そこで、日本の川や湖でよく見られる淡水魚を中心に生態を調べ、進化生物学的な視点で検討を始めたことが、本研究室のテーマの出発点です。モットーは「生物多様性の保全はまず足元から」。対象とする動物は、水生生物や昆虫、鳥類、ほ乳類など多岐にわたりますが、身近な生き物や自然環境を調べることを心がけています。研究は終わりの見えない作業ですが、根気よく続けていると、「あっ、そうか!」とひらめきが訪れるもの。粘り強く取り組むことを大切にしています。

人の暮らしの基盤を支えるために

最近注目しているテーマは二つ。一つは異性に対する雌の好みの多様性です。実験を通して、好みが変わりやすい動物を優先的に保全するなど、柔軟な対応が必要であることが分かってきました。もう一つは、絶滅が危惧される生物種の約半数が生息する里山の生物多様性の保全。重要な役割を果たしていると考えられるため池に焦点を当て、保全方法を考えていきたいと思っています。生物多様性の低下は世界共通の課題ながら、まだまだ認知されていません。静かに悪化し、あるラインを越えると突如として表面化するタイプの問題だからです。目に見える形で影響が出始めた頃には、すでに生物多様性は大きく損なわれ、回復が困難な状況になっていることでしょう。本研究室の成果は生物多様性の大切さへの気づきをもたらし、具体的な保全策の提示・実施に役立ちます。つまり、安定して生物多様性からの恵みを受け取り、人の福利(ウェルビーイング)を守るための、人のくらしの基盤を支えることにつながるものなのです。

高校生へのメッセージ

本学部には、「都会」と「自然」という矛盾する要素を持つこのキャンパスで、自然を体験的に学べる授業が数多くあります。生き物が好きな人、自然を守りたい人、多くの人に自然への関心を持ってほしい人、環境に関わる仕事をしたい人など、「自然環境が大学選びのキーワード」という方。ぜひ一緒に、自然について学びを深めましょう。