KC SCIENCE LETTERS

  • 生命科学領域

興味を起点に、人の身体を探究する

医学や人の健康に関する研究を、分子・細胞レベルから個体レベルまで行っています。分子・細胞レベルの研究では、血液細胞のできる仕組みに関わる遺伝子の働きや、がん細胞の増殖などに着目。個体レベルの研究では「女性と健康」、「ストレスと疾患」などについてゼミ生とともに取り組んでいます。

佐藤 友亮教授

先入観を捨て、結果と向き合った先にある喜び

血液細胞の研究は、私が大学院時代から継続して行ってきたものです。未熟な血液幹細胞が赤血球・リンパ球などに成熟することを血球の分化といいますが、血球の分化におけるSATB1という分子の役割を解析しています。一方、個体レベルの研究は、ジェンダー研究の伝統を有する神戸女学院大学で、バイオサイエンス領域と関連したジェンダー研究を行いたいとの考えからスタートさせました。研究を進める上では仮説を立てることが大切ですが、実験や調査の結果が仮説のとおりになるとは限りません。重要なのは、予想外の結果を得たときに、先入観をとらわれることなく、結果と率直に向き合うこと。私は「なぜこのような現象が起こったのか」を丁寧に考えたり、共同研究者とディスカッションしたりすることで、白血病のがん抑制遺伝子の働きについての研究を論文としてまとめることができました。このような経験は、バイオサイエンス研究の大きな喜びの一つだと考えています。

個々の中にある疑問や興味が、研究の原動力に

ゼミ生が作成した中高生向け教材

血液学やがんの研究は、研究者がさまざまな発見を共有し、社会へ蓄積していくことで発展します。また、「女性と健康」についての研究では、月経にともなう身体的・社会的な問題を拾い上げ、その解決策につながるような取り組みを展開しています。過去にゼミ生とともに取り組んだ、中高生向けの月経に関する教材『中高生に知ってもらいたい月経のこと』の作成は、新聞にも取り上げられ、大きな反響がありました。分子・細胞レベル、個体レベルの両方において大切にしているのは、個人の問題から出発することです。なぜなら、個々が持つ疑問や生きづらさ、興味を出発点とすることこそが、楽しく積極的に研究に取り組むために重要だと考えているから。本研究室ではこれを「当事者性を重視する研究活動」と言っています。今後もこのスタンスを重視し、多様な研究に取り組んでいきます。

高校生へのメッセージ

本研究室では、自分の興味を深めていく研究を行うことができます。身体と関係することであれば何でも構いません。細胞レベルから個体レベルまで、「自分の問題」から出発し、研究に楽しく取り組みたいと考えている方は、ぜひ神戸女学院大学のオープンキャンパスに足を運んでいただきたいと思います。