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  • サイエンスコミュニケーション領域

未来のために生物多様性保全の意義を伝える

世界的な理念である「生物多様性保全」の大切さを日本の人々が実感し、自分にできることを考えて行動できるようになるための教育プログラムや教材の開発研究に取り組んでいます。野生動物をモチーフにした物語教材をはじめ、開発・制作した教材を動物園で実践し、教育効果を確かめて改善につなげるという実証的研究を進めています。

三宅 志穂教授

「第6の絶滅期」といわれる今、やるべきこと

現在の研究に取り組むきっかけの一つは、近年の内閣府の調査です。「若い世代になるほど自然への興味・関心が薄れている」とのデータが示されたことから、特に若い世代に自然環境の価値に気づいてほしいと思うようになりました。さらに、現代は「第6の絶滅期」といわれますが、その原因は人間活動にあります。一人ひとりがそのことを知り、すべての生き物が共存していくために何をすればいいのかを自ら考え行動できるようになることを目指し、教材と伝える手法について考えていきたいという思いが強くなりました。

研究ではさまざまな課題に直面します。動物園に協力を得て、来園者向けに教材を実践する中で、なかなか人に集まってもらえないということもありました。どんなによい教材を作っても、触れてもらえなければ、その効果を正確に評価することはできません。学生たちや動物園スタッフの方々と一緒にアイデアを出し合い、教材の訴求力の向上を図りました。

地道な活動を継続することで、次代につなぐ

生物多様性保全の大切さについて、多くの人に瞬時にすべての内容を理解してもらえるということはありません。100人のうち1人にでも生物多様性保全の意義・価値が伝わるようなモノを地道に開発し続けることで、将来、多くの人が他の生き物のためにできることを考え実践してくれることを期待しています。地球が多種多様な生き物すべてにとって居心地のよい場であり続けるために一番努力をしなければならないのは、人間にほかなりません。研究を通して、そのことに気づいてもらうきっかけをつくり、ゆたかな環境と社会づくりに貢献していきたいです。今後は、研究の価値や意義を分かち合える仲間を国内外につくっていきたいと考えています。現在も他大学の研究者とともに、動物園などの協力を得ながらプロジェクト型研究を推進中。将来的には海外にも拠点を広げて、世界に通用する教育プログラムや教材を開発し、展開していきたいです。

高校生へのメッセージ

地球に存在する生き物のために自分自身に何ができるのか、一緒に考えてみませんか。本研究室ではこれまでに、アジアゾウ、コウノトリなど動物園にいる野生動物をモチーフにした物語教材、紙芝居、クイズなどを開発・制作・実践してきました。豊かな自然環境を維持し、未来につなげていくための教育手法・教材の研究に取り組みましょう。