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  • サイエンスコミュニケーション領域

マイクロスケール実験のメリットを追求

従来の実験の規模を小さくしたマイクロスケール実験は、低コストで短時間かつ手軽に実施できるので、主体的・対話的で深い学びの推進にも有益です。本研究室では、マイクロスケール実験教材の開発・改良と授業実践に従事しています。

中川 徹夫教授

より有益で経済性にも優れた理科実験を

中学校や高等学校の現場では、理科の実験に充当できる経費が不十分なために、生徒による実験の実施に支障をきたしているケースが見られます。低コストで実施できるマイクロスケール実験は、そうした課題の解決につながるもの。中学校や高等学校の学習指導要領解説にもマイクロスケール実験に関する記述が見られ、理科の授業で取り入れる中学校・高等学校も増えつつあります。そこで、種々のマイクロスケール実験教材の開発・改良を行い、その成果を学会発表や論文発表の形で公表することにより、中学校・高等学校の教員への情報提供を行っています。さらに、大学で開催されるオープンキャンパスの模擬授業やマイクロスケール実験講座などで、高校生を対象とした授業を実践。高校生がマイクロスケール実験について学習する機会を提供しています。日本学術振興会の科学研究費補助金に、研究代表者として連続して採択していただいており、それをもとに研究を推進してきました。

教育の現場における課題解決に向けて

最近はSDGs達成に貢献すべく、本来であればプラスチックゴミとして廃棄されるペットボトルのキャップを使用したマイクロスケール実験教材の開発と改良に取り組んでいます。マイクロスケール実験では、ウェルプレートと呼ばれる実験器具は、プラスチック製のものを用いるケースが多いのですが、その代わりにペットボトルのキャップと厚紙製容器を使用するという提案です。実験で使用する試薬量や実験後の廃棄物の量の減少を図ることができ、取り扱いやすく、経費がかからず、再利用も可能と多くのメリットが得られるもの。授業実践では、時間内に正確な結果を得ることができました。経費の不足により実験が十分に実施できていない中学校や高等学校でも、マイクロスケール実験を導入することで、その課題を解決することが可能となります。本研究の成果を現場における授業実践に活かしてもらうことで、理科授業のさらなる充実や質向上につながることを期待しています。

高校生へのメッセージ

高等学校で学習した物理、化学、生物などの理科の知識は、単に入学試験に合格するためだけにあるのではありません。それらは、大学での学びの基礎となるもの。日々の授業を大切にし、大学での学習・研究に備えてほしいと思います。