KC SCIENCE LETTERS
- 環境科学領域
空間を得意な見方から分析するランドスケープ研究
景観生態学研究室では、都市や都市近郊を対象に、生物多様性や社会、人々の心情など、景観:ランドスケープに関わる多様な研究を行なっています。持続可能な人と自然との共生を目指し、そのための知見を提供することを目指しています。

景観:ランドスケープを考える
普段の生活の中で、友達や家族と同じものを見ているのに違った見え方がしていたり、違った感想を抱いたりした経験はないでしょうか。生まれ育った環境や今までに学んできたこと、経験が違うこと、ものの見方に人それぞれ違いがあることによって生まれる認識のずれが、この原因のひとつとして考えられます。「景観:ランドスケープ」は、自然と人工の要素が組み合わさった空間がどのように見え、機能するかを考え、文化や社会的背景によって解釈される空間全体を指す概念です。これは客観的に空間を捉える概念であり、この考え方に基づくとひとつの空間を様々な側面から解釈することができるようになります。例えば、地形や気候風土、植物、生き物など自然環境に関する側面、人々の暮らしや歴史などの文化的な側面、行政による維持管理や法律、条例などの社会的な側面等です。ひとつの空間を様々な側面から考えるランドスケープ研究は、理系の知識・文系の知識を問わず、様々なことに興味を持って学ぶことで文字通り視える世界が変わって、人それぞれに異なる認識のずれを客観的に説明することができるようになる、面白い学問です。私はその中でも"鳥類"を指標とした生き物の側面からランドスケープ研究に関わっています。

鳥類を指標にした環境評価
都市は私たちの生活の基盤であり、そこには鳥類をはじめとしたさまざまな生き物も暮らしています。都市やその周辺に暮らしている生き物たちを守ることで私たち人間の快適かつ持続的な生活にもつながるため、世界中で生物多様性の評価が進んでいます。生態系の高次消費者であり、種によって食べるものが異なり、目視で調査しやすいという特徴を持った鳥類は、都市の環境指標として優秀な生き物です。都市における鳥類の分布を調べることで、都市環境の良し悪しを推測することができます。最近では都市環境に順応した鳥類や外来種も増えてきており、様々な研究を通して種によって出現する理由も違うことがわかってきているのですが、都市の鳥類に関する基礎的な知見はまだまだ足りていません。都市環境は日々、時々刻々と変化し、そこに出現する鳥類は環境に順応していきます。そのため、公園や河川、街路樹、里山等、様々な空間で鳥の出現に影響する要因を調査し、そのデータを集積することで、私たちの目にはなかなか見えない環境の変化を知る手がかりとするのです。調査を進めるためには、野外で鳥類の種を識別したり、地理情報や統計解析を駆使したりと幅広い知識が必要となり、これらを学ぶハードルは決して低いとは言えませんが、とてもやりがいがあります。今後は、神戸女学院大学の緑豊かな岡田山を中心として、岡田山の中だけではなくその周辺における鳥類の分布とその要因も継続して調べていくことで、都市に孤立している樹林地としての岡田山の価値を示していきたいと考えています。

高校生へのメッセージ
景観:ランドスケープを学ぶ、研究するためには、日常で目にする空間の様々なことに関わる幅広い知識を身に着ける必要があります。そのため、私たちの研究室では大学を飛び出して、日本庭園や公園、街路樹といった身の回りの様々な緑の空間を知るためのフィールドワークにも出かけます。景観は様々な側面から解釈ができるもの、つまり自分自身が持っている興味関心や得意なものの見方を活かした研究ができるとも言えます。人の数だけものの見方があり、そのために唯一の正解が存在しない果てしない学問ですが、歴史と文化、魅力あふれる神戸女学院大学の岡田山キャンパスで、ぜひ一緒に景観:ランドスケープを学びませんか。
