KC SCIENCE LETTERS

  • 環境科学領域

化学物質による汚染の実態を解明

身の回りをみると、さまざまな化学物質が大量に使用されています。それらが環境中に流出し、大気、水、土壌、さらには生物にも蓄積しています。本研究室では、化学物質により水系(川、池、海)がどの程度汚染されているのかを測定し、その原因を調べています。並行して、植物や炭などを用い、汚染された水の浄化を試みています。

張野 宏也教授

研究の起点となるフィールド調査

学生時代に行っていた分析機器の開発に関する研究を通して、分析対象だった化学物質に興味を持つようになりました。就職後に初めて与えられたテーマは、ホルモンのように作用して生物に悪影響を及ぼす、内分泌かく乱化学物質。以降、さまざまな化学物質による環境汚染の研究に携わってきました。植物や炭による水の浄化は、もともと本研究室の学生が発案したものです。卒業研究としてしっかりとまとめてくれたことをきっかけに、私にとっても重要な研究テーマとなりました。

環境汚染の現状を調べるためには、さまざまな場所に足を運んで水や泥を採取するといったフィールド調査が必要です。苦心したのが、調査対象としたいフィールドの管理者の許可・協力を得るまでのプロセス。調査の概要や、結果を公開する際には事前にしっかりと説明することなどを伝えることで、理解していただくことができました。

成果の発信と知識の継承に取り組む

本研究室の化学物質による汚染に関する調査結果は、国などが規制を行う際の資料として活用されています。水の浄化は、SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」の達成に寄与するものです。大切なのは、研究を通して得られた成果を多くの人に知っていただき、役立ててもらうこと。論文をはじめ何らかの方法で広く公表することが、第一の使命と考えています。また、研究者として得た知識を、若い世代に継承していきたいという思いもあります。「まずは実験や実習を行って、その事象の変化を体験してもらい、その理由について自ら調べてもらいながら、分かりやすく解説する」という流れで進める本学部の授業は、その実践の場の一つといえるでしょう。大事な仕事として、取り組んでいきたいと思っています。

高校生へのメッセージ

まわりの環境を定期的に眺め、今までと違った現象が見られたら、書籍などで前例・要因を調べてみてください。もし、その現象の変化が起こる要因を簡単な実験で確かめられるなら、試してみてください。それが理系の研究のスタートです。楽しく理論を学べる授業をはじめ、文系の方にも学びやすい環境を用意し、お待ちしています。