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【理科教育研究室】中川教授が「2025年度日本理科教育学会近畿支部大会」で研究発表を行いました

理科教育研究室の中川教授が、「2025年度日本理科教育学会近畿支部大会(和歌山大会)」で研究発表を行いました。今回の支部大会は、2025年11月29日に、和歌山大学教育学部附属中学校で開催されました。中川教授の研究発表のタイトルは、「2価金属と水素イオンの反応に関する教材開発:反応エンタルピー、反応エントロピーと反応進行度の関係」です。すでに2025年8月24日に日本理科教育学会第75回全国大会で発表した「2価金属と水素イオンの反応に関する教材開発:反応ギブズエネルギーと反応進行度の関係」の継続です。同セッションの座長も担当しました。
 2価金属(Cu(s)、Zn(s)、Mg(s)、Sn(s)、Pb(s))と水素イオン(H+(aq))の化学反応に関して、標準状態における混合を考慮しないエンタルピー変化ΔH°、エントロピー変化ΔS°および混合を考慮したエントロピー変化ΔSを算出しました。その結果、Zn(s)/H+(aq)とMg(s)/H+(aq)の反応が極めて進行しやすい主な原因は、ΔH°が負でかつ絶対値が大きい、つまり反応時に伴う大量の発熱によることを見出しました。一方、Sn(s)/H+(aq)とPb(s)/H+(aq)の反応に関しては、化学平衡の状態まで反応が進行し、これは発熱とエントロピーの増大の双方によることが判明しました。
 今回の研究も、既存のデータを活用して新たなデータを算出し、これを解析するというデータサイエンスの手法を用いています。研究分野でいえば、理論化学の手法を応用した理科教育(化学教育)に該当します。理想混合の場合、ΔGやΔSは反応進行度αの関数ですが、ΔHはαに依存しません。すでにΔGの関数形は決定済みのため、ΔSの関数形はΔS = (ΔH -ΔG)/T(Tは絶対温度)より決定できます。
 今回の研究は、紙と鉛筆とノートパソコン、それに表計算ソフトがあれば、化学に興味を持つ人なら誰でもどこでも取り組めます。実験試薬や器具も不要であり、結果を理論的に予測できます。化学反応に関する理解を深めるための高校化学の教材としても有用ですし、高校数学IIIの微積分の問題として扱うことも可能です。

 本研究は、JSPS科研費JP24K05954の助成を受けたものです。

【理科教育研究室】
教員情報:中川徹夫 教授(Link
研究紹介:マイクロスケール実験のメリットを追求(Link)