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【理科教育研究室】中川教授が「日本化学会第106春季年会」で研究発表を行いました

「日本化学会第106春季年会」が、2026年3月17日と20日の4日間、日本大学理工学部船橋キャンパス大学で開催されました。中川教授は、3月19日に、研究発表「高等学校化学におけるアルカリ土類金属と塩化水素や水との反応:標準反応ギブズエネルギーに着目して」を行い、そのセッションの座長も担当しました。


 アルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)と塩化水素(水溶液である塩酸を使用し、反応するのは水素イオン)や水との化学反応に関して、標準状態(298.15 K、1 bar)における反応ギブズエネルギーΔG°、反応エンタルピーΔH°および反応エントロピーΔS°を算出し、反応の自発性と駆動力について考察しました。高校化学では、アルカリ土類金属の単体や化合物のうち、それらに関する化学反応を扱うのはMg、Ca、Baのみです。しかし、アルカリ土類金属に関する理解を深めるにはすべてを対象にするのが好ましいと判断しました。


 アルカリ土類金属と塩化水素の反応に関しては、ΔG°の符号はすべて負で絶対値は300〜500 kJ/molでした。また、ΔH°の符号もすべて負で絶対値は300〜500 kJ/molでした。ΔS°の符号はBeとMgに関しては負、Ca、Sr、Ba、Raに関しては正でしたが、絶対値はわずか0.01〜0.1 kJ/(mol·K)でした。これより、いずれの反応も自発的に進行し、反応熱が主な駆動力になると判断できます。


 アルカリ土類金属と水の反応に関しては、(1)アルカリ土類金属イオン(水和)、水酸化物イオン(水和)と水素(気体)を生じる反応と、(2)アルカリ土類金属水酸化物(固体)と水素(気体)を生じる反応が考えられます。いずれの場合もΔG°の符号はすべて負で絶対値は200〜400 kJ/molでした。また、ΔH°の符号はすべて負で絶対値は200〜400 kJ/molでした。ΔS°の符号は反応(1)では負、反応(2)では正ですが、絶対値はわずか0.03〜0.2 kJ/(mol·K)でした。これより、いずれの反応も自発的に進行し、反応熱が主な駆動力になります。


 反応(1)と(2)のΔG°の絶対値を比較すると、Be、Mg、Caでは反応(2)の方が、Ba、Raでは反応(1)の方が大きくなりました。Srに関してはほぼ同程度の値でした。これより、Be、Mg、Caが水と反応した場合には水酸化物の沈殿が生じやすく、Ba、Raが水と反応した場合には水酸化物の沈殿が生じにくいと考えられます。水溶液を調製する際、水酸化カルシウムが溶解しにくいのに対して、水酸化バリウムが溶解しやすいことも、納得できます。


 アルカリ土類金属の中でも、とりわけBe、Ba、Raの単体や化合物に関しては危険性や毒性が報告されています。しかし、本手法では物理化学の理論に基づいた数値計算を行うため、このような物質の単体や化合物でも安心して研究対象とすることが可能です。そして、数値計算の結果より、化学反応の自発性や駆動力に関する知見が得られます。紙と鉛筆、それにノートパソコンと表計算ソフトがあれば、いつでも、どこでも実行できます。アルカリ土類金属に関する化学反応の理解を深めるための教材として有用で、高校現場における活用が期待されます。

 本研究は、JSPS科研費JP24K05954の助成を受けたものです。

【理科教育研究室】
教員情報:中川徹夫 教授(Link
研究紹介:マイクロスケール実験のメリットを追求(Link)