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【理科教育研究室】教員が"10th Network of Inter-Asian Chemistry Educators Conference 2025"で研究発表を行いました
理科教育研究室の中川教授が、"10th Network of Inter-Asian Chemistry Educators (NICE) Conference 2025"で研究発表を行いました。NICEとは、韓国、台湾、日本を中心とするアジアの化学教育関係者のネットワークのことで、奇数年に国際会議が開催されます。今回の第10回国際会議は、2025年7月26日から28日の3日間、山形国際ホテルで開催されました(山形県山形市)。中川教授は、7月26日に、研究発表"Development of Teaching Materials on Spontaneity of Chemical Reactions: Solid Divalent Metals with Aqueous Divalent Metal Cations using Theoretical and Microscale Experimental Approach"を行い、翌日27日には2件の研究発表の座長を担当しました。
ペットボトルのキャップと白板紙製容器を組み合わせて作成した安価な手作りウェルプレート(Low-cost handmade well plate)を用いて、2価金属(Cu(s)、Zn(s)、Mg(s))と2価金属イオン(Cu2+(aq)、Zn2+(aq)、Mg2+(aq))の化学反応に関するマイクロスケール実験教材の開発を行いました。その結果を、物理化学の理論を用いて、標準状態における混合を考慮しないギブズエネルギー変化ΔG°および混合を考慮したギブズエネルギー変化ΔGを算出して解析しました。その結果、ΔG°の値が負で大きい場合(Zn(s)/Cu2+(aq)、Mg(s)/Cu2+(aq)、Mg(s)/Zn2+(aq))は反応が極めて進行しやすく、逆に正で大きい場合(Cu(s)/Zn2+(aq)、Cu(s)/Mg2+(aq)、Zn(s)/Mg2+(aq))は反応がほとんど進行しないことが判明しました。さらに、反応進行度に伴うΔGも算出しました。反応が進行する場合は常時ΔGが負であり、反応が進行しない場合は常時ΔGが正であることも確認できました。このように、実験結果を物理化学の理論により説明できました。
高等学校化学では、エンタルピー変化ΔHは定量的に扱われますが、ΔGは発展的な内容であり、教科書にも定性的な記述にとどまっています。しかし、化学変化の中身を理解するにはΔGが不可欠です。
中川教授の研究発表に対して、国内外の多くの皆さんが興味を示され、お土産に持参した手作りウェルプレート容器の見本パッケージ(英文説明書1枚、2セル英語版2枚、2セル日本語版1枚、3セル英語版2枚、2セル英語版(切り目、折り目、クリップ付)1枚入)50セットが、ほとんどなくなってしまいました。今後も、安価な手作りウェルプレートを用いたマイクロスケール実験教材の開発・改良や普及活動を継続したいと思います。
本研究は、JSPS科研費JP17K00991およびJ P 24K05954の助成を受けたものです。
【 理科教育研究室】
教員情報:中川徹夫 教授(Link)
研究紹介:マイクロスケール実験のメリットを追求(Link)